第四届人民中国杯日语国际翻译(笔译)大赛赛题
组别:本科组
项目:日译汉
男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす
俵万智
この連載をスタートしたときには、ちょうど百回で終わる予定だった。日曜版というのは通常、一年に五十回作られるので、二年間でぴったり百首のはず。ところが、なぜか計算が合わなくて、今日、百一回目の日曜日を迎えている。実は昨年がうるう年だったことが、その原因らしい。最後に筆者の作品というのは、おこがましいような気もしたが、これも神様のプレゼントかと思い、おまけの一回に自作を選ばせていただいた。
司馬遼太郎さんの講演録を読んでいて、「チャイルド」と「アダルト」という言葉に出合った。人間は大人(アダルト)になっても、子ども(チャイルド)の部分を持ち続けるという。「チャイルドの部分が芸術を生み、学問を生む。チャイルドの部分の少ない人は大人のなかでいちばんつまらない。(中略)人間はその生涯において、子供に、親に、女房に、近所に、アダルトの部分で接することが多い。しかしアダルトの部分だけだと、これはもう俗物であります。もっともチャイルドの部分があまり豊富でも困りますが。ある心理学の本には、人間にはその調節弁があると書いてありました」
掲出歌にある「大人の返事」は、「アダルト」のほうに調節弁がはたらいている。私は、「チャイルド」の部分で君に向き合っているのに……という苛立ちが、上の句にはあるだろう。
考えてみれば、人間の心のなかで恋を担当しているのは、「チャイルド」の部分だ。だから、ここで期待されている「男の返事」というのは、つまり「チャイルド」の返事なのである。
もちろん「君」は、そんなこと百も承知で、調節弁を動かしている。「アダルト」は、摩擦を避ける知恵であり、自分を守る方便であり、また相手を傷つけないための優しさでもある。――そうせざるを得ない辛さをすべて察しながらも、私はなお抵抗せずにはいられない。だってこれは恋なのだから。あなたもチャイルドになるべきなのだ。甘さと苦さをあわせもつ反旗を、私はひるがえした。チョコレート革命とは、そんな気分をとらえた言葉だった。
俵万智「あなたと読む恋の歌百首」