第四届人民中国杯日语国际翻译(笔译)大赛赛题
组别:高职高专组
项目:日译汉
無私の死と千の風と
たまたまその交番の近くを通る機会がありました。
線路内に入った人を助けようとして電車にはねられ、亡くなった警察官宮本邦彦さんの勤めていた東京の常盤台交番です。
事故後、交番には死を悼む人々が列をなし、一万余人に及んだといいます。一月以上をへても訪れる人は絶えず、献花台には花があふれていました。
新聞には宮本さんの勇気をたたえる投書が相次ぎました。警視庁による公葬には多くの市民が駆けつけました。事故の報に接した時の自分自身の衝撃を思いおこします。宮本さんの行動と死は、現代の日本に異様なほどの感銘を与えたのです。
なぜか。6年前にも線路に転落した人を救おうとして日本と韓国の男性が命を落とした事故がありました。そのことも忘れられてはいません。
今度の場合は制服の警官です。宮本さんは自らの職務として目前の事態に臨み、命をなげうつことで職責を全うした。とっさのことであり一人の人間としては無我夢中の行動だったでしょうが、何よりもそれが「職務の遂行」として果たされたところに衝撃の源はあります。
多くの例外があることは承知の上で言いますが、現代は、職務に背いても平然としていられる時代です。逃げればいい。知らぬ存ぜぬを通せばいい。弁解すればいい。何かのせいにすればいい。いずれ世間は忘れてくれる。
政治家、銀行人、企業家といった重い責任を担うはずの人間ほどその傾向は強いようです。職責の果たし方を知らないという以上に自分の利害しか頭にないということでしょう。
人としての美学のかけらもないそうした行動が社会を腐らせてきたことを、多くの人は知っています。そんな崩壊感のなかで、突然、閃光(せんこう)のように、他人を守ろうとして身をなげうった一線の警官の行動が光を放ったのです。
職務の世界を離れた社会一般もまた、自己の利益のためには他者をかえりみない時代です。宮本さんは一人の人間としても、この薄っぺらな時代の逆を生きた。それによって、深いところで人間への信頼をつなぎとめてくれたのだと思います。
実は宮本さんの死を思いつつ、いま静かに浸透している「千の風になって」という
歌のことを考えていました。